無限のファンタジアで生きるツバキ・ヒオリ(a78458)の呟きや日記色々
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昼下がり、居間にて少女は母と父とで茶の時間を愉しんでいた時、
からりと襖を開け胴着に身を包んだ、今様色の髪を一つに結んだ青年が
木刀を持ったまま脱力するように腰を据えた。
稽古お疲れ様と声をかける母に、青年は答える。
「訓練生の根性の無さには、情けない気持ちで一杯ですね」
新たに注がれた茶を飲み干すと溜息混じりに一息つき。
その様子を見かねてか、そうだ!と思いつくように少女は、
棗兄様、久しぶりに勝負を致しませんか?と提案する。
兄は木刀の一本を無言で渡すと、このままだと訛るところだった。と笑って答えた。
朱色の三つ編みの少女が訓練場を素早く駆ける。後ろを追うように続くのは兄。
後ろから回り込み、地を掠めさせながら切っ先を振り上げる。
木刀が空を切り、鍔迫り合いに火花を散らす。
間合いを一歩詰めなおすと、次々と打ち込み攻める兄の太刀筋。防ぐを優先にし、隙を伺う。
横に薙ぎ払われた筋に大きく後退すると、悠然とその場に流れるのは
力を極める者同志の沈黙…風にそよいだ一枚の葉が互いの間をすり抜ける。
刹那、互いが地を蹴った後に空に飛んだのは、青年の木刀。
飛んだ木刀を拾い上げ、一息。
「しばらく手合わせしなかった間に強くなったね、椿姫」
汗を軽く拭うと、少女は青年へと駆け寄りながら
太刀筋を見極めれず、苦肉の策で一手を取れたまでです…!と言葉を続ける。
そういう時は種明かしをしないようにね、と笑い声をあげて頭を撫でる。
そこへ届くのは母の呼び声。互いに顔を見合わせ、声をそろえて返事をしながら走り出す。
褒められた、ふわふわとした気持ちを抑えながら兄を追う。
初めて認められた気がした。
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