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思いっきり泣いて…頭も痛いし、目が腫れてて……
しばらく外を出歩けないです……。
(お面、被ってるのでは…。と、はたと自分で気づきツッコミ入れてしまった)
…でもすっきりしたのかも、しれません。
自覚することによって気付いたなら、進歩、ですよね…?
もちろんすべての悲しかった気持ちが消えたわけではないけれど。
………うん。自分はまだ頑張れる。ハズ………。
自信は無いけれど、一人でも生きていかなきゃ。
(無言で書き綴り、日記を閉じて一言、うん、と呟いた。)
ねぇ、セス…。最近のボクは、セスよりも長く起きてて、
宵に更ける真夜中に眠りにつくことが多いんだ。
それは繰り返し見る過去の幻影に囚われているからなのかな…?
ボクの意識が眠りに落ちた-…って感じた時に、辿った記憶はいつもの場面。
映写機のように素早く切り替わる場面が、胸の奥を縛り上げるんだ。
ゲンフクのギシキノ、シッパイ…。イチゾクノ恥…
傍らに寄り添った黄色いインコは、言葉が話せない事を悔やんでいるのだろうか
鳴き声だけが一つ、響いた。横に置かれていたお面は沈黙を守ったまま。
天井を仰いだまま言葉は出ず、音も立てずに瞼からは一滴の水分。
こんなふうじゃ…駄目なのに………
…ボクは、どうしたいのかな…?
思考が曇天になり、だんだんと心に風雨を及ぼす。それに負けないように、
ただひたすら我慢していた。口から漏れているであろう嗚咽を呼吸で誤魔化して。
水分でぼやけている視界を手で覆って。悲しみは溢れて流れた。
ボク……こんな風に泣いたこと、なかったな……。
思考は冷静に安堵に達し、ゆっくりと瞼を閉じた。
今日は、新しいお友達の紹介です。
尻尾が九本ある狐さんで、フラウウィンド大陸を探索した際に発見(?)
されたお友達なのですっ。
ボクのところへ来て貰って日付が経っていましたが…
名前は白金(ハクキ)…図書館で調べたら鉱石の「ぷらちな」?とも読むそうです。
今はまだ打ち解けてくれないし、黙ったまま傍に居てくれるけど…
セスとたまににらめっこしてるのが………………気になるのです…。
(食べ物にされるのを警戒してるとか…?)←
それと…餌をあげて、白金をボクの髪と同じ赤色にするのが最近の目標です…!
(白金をじっと見て)頑張りますよっ…!
…って、懲りないですか、2人とも…。(セスと白金のにらめっこを目撃)
……えいっ!(間に割って正座で邪魔をし、びくっとした二匹)
「あ…鬼灯。」
陽も傾き始めた時刻。紫雲が空を覆い、今にも夜が目覚めるその時。
庭には自然にあふれた庭園が広がっている。
家主の趣味の域を超えて、行き届いていると感じる庭には、
今の季節にとはぴったりだからと、この間植えていったのだ。
お風呂上がりで浴衣姿。いつもの三つ編みをほどいた姿は年齢よりも大人びて見える。
彼女は夕食を終えた後の一服と称し、自宅の縁側で親友であるセスと
「足湯」ならぬ「足水」を、シュークリームと冷やした紅茶でひと時を愉しんでいた。
「姉様、髪飾り必死に作ってくれたの思い出すなぁ…」
彼女が普段髪飾り用に使っている鬼灯は植物から乾燥させて、
上から和紙を張り油を塗り撥水加工したもの。
年齢が四つ上の彼女の姉が、お揃いで、と作ってくれた物だ。
洗いたての髪を手ぬぐいで拭きながら思考は過去へと跳躍を始める。
***
日差しが翳り始めた、稽古場と一体となった庭の隅に花壇を構えた一角がある。
そこには、着物の袖を紐でくくり割烹着の出で立ちで
土にまみれた落ち着いた雰囲気の少女の姿。
艶やかな緋色の髪を市松人形のように肩口で切りそろえた、
美しいに少女に、胴着姿の武を覚悟した小さき少女が駆け寄る。
「桔梗姉様…!ボク、やりました!道場の師範代理に勝ちました!」
名前を呼ばれ、白魚のような線の細い手を止め振り返り微笑んだ。
「あら、椿姫…やっと勝てたのね。何回目の挑戦?」
ごくごく普通に聞いたであろう質問には、自分も通ってきた道を振り返っての言葉。
「………挑戦は18回目です。」
結構な負けっぷりね。と嫌味も込めて、悪戯に笑う。談笑を混ぜながら
少女は手を再び土へとむける。何をしているのかを問うと、微笑を織り交ぜながら応える。
「この間手工芸で細工を学んだから、植物を使って髪飾り作ろうと思ってね。
それの植物選びね。蛍袋にしようか、布袋葵にしようか…」
「ボク、これがいいです!」
言葉をさえぎって小さき少女が指差したのは、提灯のように膨らんだほの紅い植物。
「これは、鬼灯ね。百鬼夜行とかこれでいけるかも…」
少女は寓話を思い出しながら、花言葉を頭の中で探し、反芻する。
そして、はたと気づき訝しげな視線を向けツッコむ。
「椿姫に作るとは一言も言ってないけど…?」
「うぅ…いいじゃないですかっ…!細工物は姉様のほうが綺麗に作れるわけですし…
ここは一つ、ボクの分も…!」
さりげないおねだりを企みつつも、手先の器用さを褒めてもらった上に
髪飾りに興味を持つようになった妹に姉として引っ込む訳にはいかないと
意地を張ったが後の祭り。良き理解者でもあり、良きライバルに贈るのは、
ほんのちょっと季節が過ぎてから。
ほんの少し、離れることが分かってから。
***
「けっきょくゲンフクで失敗してから急に家を出ることになっちゃったし…。急いだろうなぁ…」
視線の先には髪飾り。敬愛すべき姉とのお揃いで、愛用の品。
(そういえば…鬼灯の花言葉…なんだったかな…?)
思い立ってすぐに行動に移そうと、
しこたま急いでシュークリームを口に含み、紅茶もあわせて飲んだら
勢いが強すぎてむせ返ったが。
足が濡れたまま畳へ上がり、蔵書の部屋へと駆け込んだ。
そんな彼女をインコとお面だけが静かに見守っていた。
一人騒がしくこけた音を屋敷に響かせて。
そんな、ある夏の日の出来事。
白い靄がたちこめる場所に立っていた。
朱色をまとい三つ編みを施した髪の、少女ー…。
少女はふと心に…現実じゃない場所だと悟った。そう思った瞬間、
景色が鮮明に過去の場所へと彼女を引き込んだ。
離れてからそんなに時間がたっていないはずなのに、懐かしくも
感じる故郷。実家の景色。
まだ日も昇りきらない夜明けの門前
少女と同じ、朱色をまとった髪を腰までまっすぐ伸ばした、おっとりした雰囲気の中に
芯の強さが垣間見える女性が声をかける。
「何度も確認するようだけど…本当に、行くのね?」
少女が応える。
「…ボクは、一族の恥と罵られたままここにいることが出来ませんっ…」
少女は苦い思いを胸の奥深くにしまっていたいはずなのに、
それでも克服しようと立ち上がった姿とは裏腹に、
しかし顔を紅潮させてうつむき、言葉が消えながらも必死に紡いだ。
「…その心意気、確かに受け取ったわ。でも、今の状態で
話しているようじゃ克服も何もあったものじゃないわね」
半ば呆れれながらも笑って小さな体を、ふと抱き寄せ
無理をしては駄目よ…、と心の揺れる思いを少女へ囁いた。
そうしてゆっくりと離れると、袖元から一つのお面を出し、少女の顔へそっと撫ぜ…
「これをつけて、人前に慣れて帰ってきなさい………椿姫」
狐と呼ばれる生き物を模したお面の下から、凛とした瞳を覗かせて
紐をしっかりと固く、固く結んだ。約束と共に。
その景色は名前を呼ばれたと同時に、鬱蒼とした彼女の意識を現実へと戻した。
天井を映した視界に、鮮やかな黄色が横切った。
つぶらな赤い瞳がこちらを覗きこむと、お面をこつこつとくちばしでつついた。
少女は布団から上半身を持ち上げると、ゆっくりと夢の跡を辿る。
縁側へ続く障子へ手を伸ばし、宵闇の中の光を追う。
お面が、ぱさり、と音を立てて落ちる。
「夢…?ここに来る前の…?」
続く言葉は胸の中に響き、再び眠気へと誘われ、もぞもぞと布団へ戻る。
彼女の指先には小さな赤い小箱が片時も離れず触れていた。
意識は、ゆっくりと遠のいた。