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無限のファンタジアで生きるツバキ・ヒオリ(a78458)の呟きや日記色々
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マウサツの地を踏み、身を寄せた宿で夜を迎える。

乾きかけの髪の毛を夜風にさらしながら、お気に入りの香を焚きしめお面を外す。

ふと思考によぎったのは、

今度この地を踏むときは、愛しき鷹のお話を聞きながら…なんて。

少し思い出しただけで、頬の温度が急激に上がる。

膝に乗せたままだったお面で、さっと顔を覆うと、照れ隠し(?)のつもりなのか

百面相…ならぬ激しい身ぶり手振りで布団を被る。

そんな光景を疑問顔で眺める少女の親友は、やれやれといった表情で見やり眠りについた。

 

翌朝、朝日と共に視界を開けた少女は、朝食をとった後に身支度を整え

人通りの少ない街道を抜け、船着場へ足を進める。

起き抜けの欠伸がとまらない船頭に、便を伺い行き先を告げ、波間へと揺れる。

 

「あと、少しですね…」

 

静かに揺れる波を眺めながら、だんだんと重くなる瞼を閉じると

意識はゆっくりと心地よいリズムで落ちた。

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纏めた荷物は簡素だった。

大きな風呂敷に小さく、くるりと翻すと背中へとあてがう。

 

「よし、準備完了です…!セスも準備いいですか?」

 

もちろん、と言葉が返ってくるように彼女は少女の右肩に乗り、一声囁く。

向かうのは故郷の楓華列島、エミシ州アオバの国。

そこまで向かうにはかなりの旅路になる。

しかし荷物は少ない。なぜなら…

『実家へ帰る』

ただ、これだけなのだ。許しを請うのでは無い。

人と出会い、触れ、言葉を交わし…冒険者となってから、幾重の生と死を見てきた。

成長なのか?と自問すれば違うのかもしれない。

大切な絆を持つ人が生きていて欲しいと強く願い、愛しい人の傍に居る幸せが

これほど心を震わせた思いならば、

自信を持って、お面が無くてもボクは生きていけると伝えたいのだ。

 

そんな思いを他所に、いつの間にか足はドラゴンズゲートの精霊の社へと進み

蒼の迷ひ路へと辿りつく。

水に纏われるような感覚に懐かしさを憶えつつ、足が少しづつ足早になるのが分かる。

 

あと少し。

 

ボクは置いてきた自分を取り戻しに行こう。

眩しい光を見上げて、地上へ向かう。

まずはマウサツの国へ地を踏んだ。

素敵な月夜のひと時に、笛の音色は心を解きほぐし…

水面に映る月は手で触れれば消えてなくなり…再び元の形へと…

 

…お借りした衣が…とても温かかった…

 

夢のような時間……どうか、これからも醒めないで欲しいのです

吉野河 いは浪たかく 行く水の はやくぞ人を 思ひそめてし

静かな夜の、雲に覆われた明かりの少ない空。

障子を開け、光を招き入れる部屋の片隅に反射する、小さな小さな鏡台。

その前に座して佇むのは赤い髪を三つ編みにした少女。

すでに寝間着姿である彼女は無言のまま。

髪飾りである鬼灯を一つ、また一つと外し、髪の結び目へ手を伸ばす。

しゅるり、と音を立てて流れるように弾ける三つ編みは、

まっすぐに伸び、肩より下へと下ろされた。

 

「…星の世界…ですか…」

 

祭りが終わったのとほぼ同時期に、インフィニティマインドにてこの世界ではない

星の海へと行くと言う話が出ている。

好奇心はうずき、わくわくしている自分の気持ちも知っているが…

途中で思念を払うために頭を軽く振り、お面の紐へと手を伸ばす。

手を添えて離れたお面を膝に乗せ、下がっていたままの視線を、

顔をゆっくりと鏡台へと向ける。鏡に映るのは無論自分の顔。

自戒の思いもあるがゆえに、改めて鏡越しに見る自分の顔は久しくもあり、

そうでもない摩訶不思議な心境。

櫛で髪を梳かし、流れる沈黙の間。思考に浮かぶのは故郷、楓華列島ー…。

母との約束を十二分に果たしたとはいえないが、一度帰れるのなら、地を踏みたい我が家。

 

「きっと…行かないですね…。行くのは…」

 

消え行く言葉は月に照らされ、彼女は意を決したように

仕舞ってある振袖を引き出した。……まずは普段出来ないことから。

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