無限のファンタジアで生きるツバキ・ヒオリ(a78458)の呟きや日記色々
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静かな夜の、雲に覆われた明かりの少ない空。
障子を開け、光を招き入れる部屋の片隅に反射する、小さな小さな鏡台。
その前に座して佇むのは赤い髪を三つ編みにした少女。
すでに寝間着姿である彼女は無言のまま。
髪飾りである鬼灯を一つ、また一つと外し、髪の結び目へ手を伸ばす。
しゅるり、と音を立てて流れるように弾ける三つ編みは、
まっすぐに伸び、肩より下へと下ろされた。
「…星の世界…ですか…」
祭りが終わったのとほぼ同時期に、インフィニティマインドにてこの世界ではない
星の海へと行くと言う話が出ている。
好奇心はうずき、わくわくしている自分の気持ちも知っているが…
途中で思念を払うために頭を軽く振り、お面の紐へと手を伸ばす。
手を添えて離れたお面を膝に乗せ、下がっていたままの視線を、
顔をゆっくりと鏡台へと向ける。鏡に映るのは無論自分の顔。
自戒の思いもあるがゆえに、改めて鏡越しに見る自分の顔は久しくもあり、
そうでもない摩訶不思議な心境。
櫛で髪を梳かし、流れる沈黙の間。思考に浮かぶのは故郷、楓華列島ー…。
母との約束を十二分に果たしたとはいえないが、一度帰れるのなら、地を踏みたい我が家。
「きっと…行かないですね…。行くのは…」
消え行く言葉は月に照らされ、彼女は意を決したように
仕舞ってある振袖を引き出した。……まずは普段出来ないことから。
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